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【コラム】宮崎壮玄の中国一刀両断 − 第1回「『君の名は。』はなぜ中国でヒットしたのか」

· Column

 『君の名は。』が興行収入5.77億元を突破し中国で公開された邦画の記録を塗り替えた。この映画が中国でヒットした理由は、韓国コンテンツの締め出し、海賊版疑惑のある写真加工アプリEverfilterを用いた大衆による自発的なプロモーションなど、きな臭いキーワードを用いられて理解されていることが多いが、最大の要因は、ひとことで言ってしまえば分かりやすさである。

 『君の名は。』は非常に分かりやすい二項対立で成り立っている。大災害という現実とぼく、きみ。男と女、都市と田舎、夢と現実、未来と過去。これは徹底されており、登場人物の小物の色までもが緑と赤で補色をなしている。そういった分かりやすい対立構造の上に、中国でも親しみのあるタイムスリップ(これは、中国語で「穿越」と表記され中国でフィクションの一大ジャンルになっている)の要素や、「結び」というわれる神秘的、もしくはご都合主義的な繋がり(これは中国の四大名著の一つ『紅楼夢』の主人公の“金玉良縁”という日本語的にはやや危ない言葉遣いの繋がりや、大人気監督チャウ・シンチーの『チャイニーズ・オデッセイ』シリーズに見られる宿命的関係などが代表である)を用いて細かいストーリー描写を省き物語をどんどん先に進めていくスピード感が見られた。

 また、プロデューサーの川村元気さんにリスニングしたところ、劇中のプロットの中でも、元気流に言えば、入れ替わった主人公が泣きながら胸を揉むという「ONの笑い」部分が中国でウケたという。つまり、「ここ、笑うところですよ」という見せ方が意外とウケるということである。 

 中国では内容以外にも分かりやすさが重要である。『君の名は。』はエンライトメディアによって、3ヶ月足らずの準備期間を経ての超異例スピード上映だった。メディア関係の知人に聞いた話であるが、日本のコンテンツを中国に輸出する上で一番問題なのが、中国から見ての「分かりにくさ」であるという。どの機関の誰と話していいのか、話をつけた後にまた別の部門と話をつける必要があるので敬遠されているという話である。『君の名は。』に倣うわけでもないが、内容だけでなく日本と中国という関係性ももっと分かりやすくなって、スピード感を出していって欲しいと思う。

 今回は、去年の事例から「分かりやすさ」を強調したが、「一脸懵逼(「なるほど、分からん」というスタンプ)、黑人问好(黒人の周りにクエスチョンマークが大量に配置されているスタンプ)」というキーワードに代表されるような、いわゆるシュールなコンテンツもここ数ヶ月で出始めている。数年後には分かりやすいコンテンツが飽和し、シュールなものが流行る可能性があると思っているが、それについてはまた別の機会に説明したいと思う。

宮崎壮玄

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